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連載小説-8

連載小説-8
第8話 そこに南風が吹く未来の証明。

sub tittle 「Home Dorama」
 郊外に行くと必ずというほど存在する大型ショッピングモール。そこの屋上で売っているアイスクリームが美味とのことなので、クラスの男子の一人である高積毅と相島青葉とで放課後に出かけることになっていた。
 高積と相島の仲が妙に仲よさそうに見えるのは、もしかしたら彼氏彼女の関係なのかも知れない。この相島と友誼を図る男なら問答無用で腹立たしさを感じるオレだろうが、高積の人懐っこい笑顔を見てると、そんな気も消え去ってしまう。どことなく、二人は似ているような気もするし、やけに意思疎通も取れている。百歩譲って恋愛対象じゃないのだとしても、友達以上の存在であるのは確かっぽい。妙に距離が近いんだよ。それにたどたどしさもない。

「ねぇねぇ。まず先に服屋さんに寄らない?」

 彼女の提案にオレは迷わず首肯した。
 転校してきてすぐの身を誘ってくれた二人に今日のところは逆らう気はないし、実質的な決定権は殆ど高積に委託してる。

「そうだね」

 180cmを間違いなくオーバーした男子の、からからと張りのある声だった。

「長澤くん?」
「長澤。ほれ、早く」
 高積の超ローボイスは大太鼓を叩いたときのように空気を震わせる。震度3。

 レストラン街から、出ると本屋や文房具屋や小物ショップなどの店が並んでいて、下の階へ降りると、そこは洋服売り場になっていた。かなり大型のモールだから来たことがないわけじゃなかったが、地元民だけにさすが二人はこの場所を熟知しているようである。何時ごろにセールをやってくれるのだ、とか。どこのお店が一番おいしい、とか。クレープは高い割においしくない、とか。オレはそんな二人の会話に適度に混じりつつ、新たな店を開拓すべく目を光らせていた。

「暇だからさ、ゲーセン行かない?」

 高積はちょっと淡々とした口調だが、声はずいぶん明るかった。そのギャップは少年時代に初めて声優の顔を見たときのことを思い出させる。ポケモンのピカチュウ役が人間だとは想像が付かなかったあの時代のことだ。
 相島は小さく頷いて、
「私、リラックマのぬいぐるみが欲しいなー。ほら、さっきUFOキャッチャーにあったじゃない」

 いかにも女の子らしく、かわいらしい願望ではある。だが、この展開はどこかで見たことがあるような気がする。ん、リラックマ?

「相島はリラックマが好きなのか」

 高積と相島が知り合ってからどれくらいなのか分からないが、とりあえず高積にも分からないことはあるらしい。ちょっと安心した。さすがに何でもかんでも相島のことを知っている、ということになるとオレが付け入る余地がなくなってしまう。

「実星の方がスキだと思う」
「ああ、そうだったかもね」

 自分から聞いておいて、その淡々とした声はなんだろう。もう少しテンションを上げるとか出来ないのだろうか。
 しかし、相島は意に介す様もなく、相変わらず如才ない笑みを浮かべている。相島が笑顔じゃなかったときのことを思い出せないほど彼女はずっと笑顔だし、ついでに言えば笑顔がオレの好みなだけに、より笑っているときの印象は強固なものになっている。

「高積くんは出来るー?」
「何が?」
「UFOキャッチャー」
「できないよ」

 彼は矢継ぎ早に答えた。その潔さには少し感心する。女の子の前でちょっとはいいとこ見せてやろうとか、そういうのは無いんだな。
 しかし高積は自分が出来ないことを要求されたというのにちっとも慌てた様子じゃない。この余裕すぎて、何かに怒っているんじゃないかと思うほどだ。しかし、相島曰くこれはいつもの調子らしく、ややもするとオレが居ないときもそうらしい。

「オレがやってやろうか」

 相島のご機嫌を取りにいったわけじゃない、これは今日誘ってくれたお礼のつもりだ。

「やってくれるの?」

 彼女の声が一気に明るくなる。イメージ通りのリアクションを取れたときほど、カタルシスを感じることはない。

「オレはプロフェッショナルだから」
「確かに長澤はいろいろ出来そうな雰囲気出てるな」
「どういう雰囲気だよ、それ」

 というわけで、ゲームコーナーに立ち寄ることになったオレは、すぐに機械の前で直立した。普段ならアームの位置からしまりまで分析するオレなのだが、リラックマという制約がある以上、立ち位置はここしかない。幸いにもそれほどアームは緩くなさそうであるし、目標は小さかった。バランスを取る必要も余りない。
 オレは、200円のプレーで獲物をしとめ、オレは小さなリラックマのキーホルダーを相島に手渡した。
 オレは得意げに親指を立てた。

「どう?」
「すごいよ、すごいよ。長澤くんっ!」

 相島がオレの手を握り締めてくる。手のひらからも漂ってくる甘やかな香りに思わず意識がハワイまで吹き飛ばされそうになる。顔は

「お前、すごいな」

 嫌味っぽさが一切ない口調で高積も手を叩いた。ただ、やっぱり淡々としているのだけど。


 UFOキャッチャーをねだる少年がUFOキャッチャーのウィンドウを揺らしていた。駄々をこねるにしてもやり方が悪い。母親を説得するよりも先に店員さんから指導を受けてしまうぞ。そうなれば、母親はいよいよ剣呑たる面持ちになりて、この不健全な場所から脱出していくだろう。これだから、小学生はゲーセンが禁止になるんだ。不健全なことをする以上、それが不健全だということを意識しなければならず、小学生にはそれを理解するだけの頭もひねた心もないのである。もっとも、オレが言えたことじゃないのかもしれない。

 あの時、とにかく遊戯王カードがほしかったオレはその資金源に困り果てていた。そこで唯一の収入源が親戚からのお年玉だったまだ幼きオレは、まだ小さい脳みそでいかにして金を得るかを考え、思いついた。UFOキャッチャーの商品を売ろうと考えたのである。
 この考えは発想のチープさゆえに、成功しないと考えるのが常だろうが、実は上手く行っている。技術の向上とともに財政が黒字に転じたのだ。財政が軌道に乗り始めると、これは笑い話だが人にものを頼まれるようになった。どういうことかと具体的に言えば「あの人形をとってほしいから1000円でどうだ」といった旨のことを依頼されるようになったのである。
 カードがたくさん買えるようになると、カードは余りだす。同じカードを何枚か同時に使用することはできるのだが、最大でも三枚までとルールで決まっていたので実質三枚以上同じカードを持っていても意味がない。そこで不要なカードを売り始めた。大手ゲーム店に売ったこともあったし、それより高値で売れるとあれば同級生にも売った。
 中学生の半ばにはすでにカードはやめていたが、そのとき集めたカードをすべてネットオークションに出したら15万ほどついた。一世を風靡したあのときを考えると界隈ではだいぶ勢いが落ちていたように思えるこの遊戯王カードであるが、日本を探せばコアなファンがいるようである。手塩にかけた強力カードたちだから、きっと彼らも熱狂的なプレイヤーの元でがんばっているに違いない。ご武運を。
 という成り行きがあって、だからオレはUFOキャッチャーを研究し尽くした経験があるのだった。決して実用的な能力ではないが、人間関係の円滑化にも役立ってくれることがある。たとえばそう、こうしてアイスクリームをおごってもらえるわけなのだから。持っていて損をする能力じゃない。

「相島が驕ってくれるなんて珍しいな」

 高積が初めて冗談めかした口調で言った。もしかしたら苦笑しているだけなのかもしれないが、今までニヒルで声の抑揚がほとんどなかった分、口調の差異は分かりやすい。

 フードコートのソフトクリームを目標にオレたちは歩き出した。
 ここのモールをオレはよく知らないから、二人が先導し、オレがその後ろにくっつくという構図だった。最初であったときも思ったが、その二人の後姿に妙な同一性を感じる。たとえば二人の距離。距離が近いというのはお互いがお互いを信頼しているというという要因も作用しているのだろうが、歩調の癖を知らなければ近くを歩けない。つまり二人が近くを歩けているということは友達としてもかなり成熟しきっているということになる。そんな些末なことを元から気にする性質じゃないのだが、こういうところだけ目ざといよな、お前さん。

「ねぇ、長澤くんは野球好き?」

 野球という単語に高積がピクリと反応し、相島はその様子に気づいたのかクスリと笑った。

「うーん。たまに高校野球を見る程度かな」
「ああ、今年は育英が強そうだよね。球速いピッチャーがいるでしょー」

 そう言われれば、そんなことを誰かが言っていたような気がする。だがオレの野球熱というのは「ような気がする」で終わってしまう程度のぬるさであり、正直言えば本気で野球が好きな人間と語り合えるような気がしない。

「好きな球団とかある?」

 ああ、その質問か。その質問はこの間中田にもされた。アイツは楽天が好きなんだそうだ。楽天イーグルスという球団がこの世に生まれてから三年ほどになるが、仙台のファンは確実に増えている。そう感じることも多くなってきた。中田がそうだったように、相島もそうなのかもしれない。だとしたら、先手を打って話をあわせてやるのは上策だと思うが、

「ないかなぁ…」

 結局、無難な答えを選択した。

「私、日本ハムが好きなのーっ」

 彼女の口調が急にはねた。魚がぴょんと水中から飛び出る姿を想像する。
 日本ハムといえば、ダルビッシュがいたな。オレの持ちうる野球知識は東北高校で鳴らした全国区の豪腕投手をかろうじて包含していた。

「長澤くん。実星に遠慮することないよ。正直言って強い球団のほうがいいでしょ?」

 勝負事なのだから、もちろん勝ったほうがいいに決まっているが、日本人のデオキシリボ核酸が含んでいると思われる判官贔屓的な性質上、優勝チームと弱小チームなら弱小チームを応援したほうが楽しいかもしれない。

「ダルビッシュとか好きなの?」
「なんとなく応援してるかな」

 相変わらず無難な答えを選択したが、相島はその問いを待っていたかのように、語気を強めて、

「かっこいいでしょ。ね? ね? ね?」

 相島の大仰な表情は何だろう。

「オレは楽天のほうが好きだけどな」

 脇で高積が言った。

「高積くんには聞いてませんーだ」

 ふーん、とオレは心の内で鼻を鳴らした。相島の笑顔に思わず笑ってしまう。いままでオレに向けていた笑顔とは根本的に別物なんだな。オレに向けてた表情のイメージは明るいがなぜか精緻たる様子で、ニヒリズムすら思わせる。しかし高積に笑顔を向けた瞬間、まるでリボンを解くように笑顔が絢爛無垢へと変化した。

「長澤くん。こんど一緒に日本ハム戦見に行こうよ。ライト側で」
「応援歌とか歌ったりするんだっけ?」
「教えてあげるからさ」

 こういうやり取り、まるでホームドラマ的でオレはやっぱり好きだけど、演技っぽさをどことなく感じるような気もする。相島は実力派といわれるだけの演技力を持っている気はするが、それでもオレは違和感を感じてしまう。ドラマの中でとてもリアリティーを感じる人間たちが、一時間過ぎたあとのバラエティー番組、あるいはCM内で役者という別に人間に戻っている。そんな光景を見るのがオレは一番嫌いだった。人間には裏があるのが当たり前だと肯定してるようで。
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こんにちは~
す、すいませんっ! わたくしチョコチョコこちらにお邪魔していましたが、『最新のコメント』をチェックしていたようで、更新されているのを見逃していました! まことに申しわけありません……m(__)m

今回は微妙な関係を洒脱に描かれていますねえ……さすがピカットさん。時々難しい言い回しが入るところなど、渚くんのちょっと斜に構えた感じがイメージできます。
再び続きが気になりますねえ!

今回思いっきり読みやすかったので、特に気になるところはありませんでした。
でも渚君がリラックマを取った後、ハワイに行ったという行の最後で「顔は」ってなんだろう? とふと思ったりして……
それと、難を言えば「UFOキャッチャーをねだる少年が……」で始まる文が少しくどいかな? という感じです。
ちょっと重箱つつきの感がありますが、全体的にすっきりしてます!
次の更新も待ってますので、頑張ってくださいね~!
by: 月夜ノ蝙蝠丸 * 2008/06/22 17:31 * URL [ 編集] | UP↑

ありがとうございます。
あれ、意味があるのかというと、渚くんの斜めった正確の理由だとかを書きたかったのですが、くどくなりましたね。

というか、変更した点分かりました?
小さなミスなんですけど、結構大切なミスだったのです。危ない危ない。。。
by: ピカット * 2008/06/22 17:48 * URL [ 編集] | UP↑

こんにちは~再びおじゃまします。
すみません、思いっきり謝まっちゃいますけど、重大なミスってわかりませんでした……
前のバージョンでは、確か実星ちゃんが出て来て、洋服屋でアルバイトをしているところに三人と会うシーンがあったように思います。ライブをするために知り合いのお店を手伝っている?だったかな?
それで高積くんをチラ見するような感じで……?
う~ん、もっと何回も読んで覚えておけばよかった~~~!
すごく気になります~(*^_^*)
by: 月夜ノ蝙蝠丸 * 2008/06/23 11:41 * URL [ 編集] | UP↑















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